前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
なんでもないと微苦笑を向けるものの、俺の脳内では絶叫と警鐘が絶え間なくエコーしている。
鈴理先輩に食われないよな、俺。
いや大丈夫だろ、二部屋しかない俺の家だから…、両親がいる間は流石の先輩もおとなしくしてくれている筈。
それにこれは鈴理先輩を元気付けるためのお誘いなんだ。
少し暴走してもらっても構わない…、ことはないんだけど、本調子に戻ってくれたらと思う。
最近の鈴理先輩、なんかおかしいんだ。ぼーっとしていることが多いというか、物思いに耽っていることが多いというか、なんというか。
悩みがあるのかなぁって声を掛けたんだけど、生返事をするだけで何も答えてくれなかったし。
なにより言動がおかしい。
例えば、そうだな…、今日の昼休みの流れを例に挙げてみようと思う。
まず俺達が昼食を取るために移動している時のことだ。
俺と先輩で学食堂に向かっている最中、大雅先輩と遭遇。彼とも一緒に食べるってのが日常化しているから、三人で学食堂に向かっていたんだ。
移動中は鈴理先輩が真ん中を陣取っていたわけだけど、不意に俺達を交互に見やって唸った。
どうしたんだろうって思った瞬間、俺達は彼女に腰を撫で回される。
悲鳴を上げそうになる俺と、「何しやがる!」怒声を上げる大雅先輩。
鈴理先輩は状況を気にせず、これまた唸り声を上げて思案に耽った。
と、思いきや鈴理先輩は髪をグシャグシャにしてすんごい奇声を放つ。
発狂したというべき先輩の挙動に、ちょっち引いていると思い立ったように彼女は許婚を見て言った。
「大雅。抱かせろ」
ピシャーン!
衝撃という名のカミナリに撃たれる俺と大雅先輩は揃って石化、鈴理先輩は大真面目に抱かせろと廊下で大々的に言い放った。
一応、俺達カップルは学院では超有名人。
俺の顔は知らずとも、雄々しい行動をして下さる鈴理先輩の顔は学院でも広く知れ渡っている。
どれだけ彼女が俺とセックスしたいのかも知っているし、ゾッコンなのも知っている。その彼女が他の男に抱かせろと言う。