前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
これだけでも十二分に鈴理先輩の様子はおかしいと分かる。
だけどもっとおかしかったのはこの後。
学食堂で俺は弁当、鈴理先輩と大雅先輩は定食を食べていると、味噌汁を啜りながら我が彼女が頓狂なことを零した。
「食べ終わったら抱かれてもいいかもな」
盛大に咽た俺と大雅先輩の心情は察して欲しい。
だって攻め女の持論を掲げている鈴理先輩が、「抱かれてもいい」と仰ったんだぜ? 驚くどころの話じゃない。
天変地異が起きたって不思議じゃない。
もしかしたら明日、世界的規模のトップニュースとして宇宙人が侵略に来るのかもしれないな。
ワレワレハ宇宙人侵略キタアルヨ、と挨拶されるかも。
とにもかくにもどっかーんな発言をされて俺達は本日二度目の石化。
「鈴理先輩」具合でも悪いんっすか? おずおずと聞けば、彼女は何を思ったか箸を握り締め、荒々しく食器をトレイへ。
こめかみに青筋を立てた彼女は、俺を睨んで「やっぱり嫌だ!」大喝破してきた。
「あたしが抱くが良いのだ! 空のくせにあたしを抱きたいなどとはケッタイな! お誘いか!」
「えぇええ?! 今の過程で俺が叱られる要素なんてひとつもない筈っすよ! お誘いもしてないじゃないっすか!」
「大雅も大雅だ! あんたは、あー、あー…、とにかくあたしを怒らせたな!」
「テメェ…、単にそれ、八つ当たりをしたいだけだろうが」
煩い煩いうるさーい!
テーブルを叩く鈴理先輩は、「あんた達なんてなぁ」揃って女にヤられたら良いのだと毒づき、脹れて食事を再開。
「空は後であたしとスるからな!」なーんてフンッと鼻を鳴らす始末。
だけどすぐに溜息をつき、「神様は」何故アダムとイブを作ったのだろうか、といきなり哲学的な話を持ち出して肩を落とした。