前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「べつにアダムとイブを作ったことに異論はないのだが、立ち位置がなぁ。男は女を守る。女は男に守られる。
神様はどうしてそういう法則を作ってしまったのだろう。女は弱い生き物なのだろうか。
いいや、昆虫のとある世界では交尾を終えたメスはオスを食らってしまうらしい。
体的にもメスの方が大きいらしいし。
うむ、何故人間もそのようにならなかったのか。カニバリズムを求めているわけではないのだが、人間の世界にも女は男を食らってしまうという法則が欲しい。主よ、あたしは食らいたい人間なのですよ」
「……、大雅先輩。幼馴染みとして、今の彼女をどう見ますっすか?」
「……、ご乱心、としか言いようが」
「こうなれば革命を起こすしかないのか! 世界でも征服して法則を変えれば、世の女は皆、攻め女になるのか! よし、だったら何から始めるっ、修行してかめはめ波の取得からでも始めれば良いのか?!」
「……、悪質な風邪にでもかかったのかもしれないな」
「……、あれ。風邪なんっすか?」
「はぁああ。そんな馬鹿なことがあるか。あたしは宇宙人ではない、取得は不可だ。幾らあたしでも不可能という文字が辞書にある。
ナポレオンの名言に茶々を入れたくなる。人間誰しも不可能はある、と。不可能と言う奴は愚か者? ええい、だったら人類皆、愚か者だ」
「……、鈴理の変人っぷりには慣れている筈なんだが。あれはちょっと変の度を超してやがる」
「……、病院の何科に連れて行けばいいんっすかね。俺、心配になってきましたっす」
「愚かと罵ったナポレオンに聞きたい。愚かなあたしはどうすればいい! 返事をせんか! こら!」
「……、鈴理先輩。見ているだけで痛々しいっす」
「……、泣くな豊福。俺も無性に泣きたくなる」
ぐわぁあっと呻いてテーブルに撃沈する彼女は、「守られる側など」言語道断だとシクシクと嘆く。
掛ける言葉もないとはこのことだ。
撃沈している彼女に俺達は顔を見合わせた。
本当にどうしたんだろう、鈴理先輩。