前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「僕は男嫌いだ。君も知っているだろう? このような性格だから、珍しくも許婚がいないんだ。いや、白紙になったというべきか。
まったく男のナニがいいのか、僕には理解できない。断然女の子の方が可愛いし、可憐だし、魅力的な生き物だと思うのだが」
「……、玲お嬢様。そういう発言は公共の場では控えて下さいね。誤解されかねないので」
本当のことを言ったまでだと玲は素っ気無く顔を背ける。
「もう17だというのに」
お嬢様は損していますよ、蘭子は肩を竦めた。
17といえば花盛り、学園生活も然りだが、恋愛も積極的に歩んでいい年頃。
なのに目前の令嬢はいつも女子と戯れて。
歩んでくる男子を一蹴しているというのもあるだろうけれど、それにしたって恋愛に対して消極的過ぎる。
彼女の父も、どうにかして男に興味を持たせたいと躍起になっているのだが、結果は謂わずもこれだ。
はてさて困った。
彼女はどうしたら男に興味を持ってくれるのだろうか。
……あ、そうだ。
蘭子は玲の興味を示しそうな話題を切り出した。
「最近、鈴理令嬢が恋に夢中だそうですよ」
竹之内財閥三女・竹之内鈴理は良くも悪くも玲の好敵手(ライバル)である。
なにかあれば、いつも彼女と競り合っていた玲だから、ああほら、言ったそばから少しばかり興味を示している。
仏頂面に視線を流してくる玲は、
「それがどうした」
あいつには大雅という許婚がいたではないか。
驚くことではないと毒づいてきた。
「とうとうあいつも」
大雅との恋愛に目覚めたか、どれほどオトメチックな奴になっているのか見物だ、なーんて皮肉る玲に、蘭子は首を横に振る。