前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
敵わないや、目前のプリンセスには。
遠まわし遠まわし元気を出せと励ましてくれるんだからさ。
鈴理先輩とは別枠でちょっと困った攻め女さんだけど、先輩として、友達としては好きかもしれない。
初対面が初対面だったけど、二人のやり取りを見て動揺する俺にさり気ない優しさをくれたんだ。
好感を持っ…、はぁあああ、これがなかったら素直に好感を持てるんだけどな。
こめかみを擦り、俺は御堂先輩に何をしているのか敢えて尋ねてみることにした。
にこにこと笑顔を作っている御堂先輩は、
「此処に豊福の足があったからな」
愛でているのだとのたまった。のたまってくれた。
そうっすか。
やっぱり貴方様も鈴理先輩と同類っす。
変なところバッカ攻めてくる攻め女っす!
太ももを触ってくる御堂先輩に、逆セクハラだと注意を促すけど聞いちゃくれない。
「僕にも労りが必要なんだ」
なーんて言って太ももを撫で撫でお触りお触り。
蘭子さんは注意してくれるどころか、「自ら男の人に触っているなんて」旦那様も奥方様も喜ばれることでしょう、と感動に浸っていた。なんでやねーん。
仕方がないので手を繋いでその行為を止めることにした。
鈴理先輩のことが脳裏にちらついたけど、自己防衛のためにこの策を取らせてもらおう。
おイタする手を結び、俺は車窓から外界を眺めた。
信号を待っている人々の多くが若人だ。休日だからどこかに遊びに行っているのかもしれない。
通行人が横断歩道を交差している中、車は発進する。
後ろに流れていく景色の一部に鈴理先輩と大雅先輩を垣間見た気がした。
首を捻って後ろを振り返るけど、既に見えていた店やビルは後ろに流れて小さくなってしまっている。動揺したゆえに錯覚を見たのかも。
わりと引き摺っているんだな。
二人の仲を疑っているわけじゃないんだけどさ。
よそよそしい最近の二人を目の当たりにしているから、妙に違和感と不安を覚えるんだよ。
まるで二人が俺に重大な何かを隠しているような、そんな気がして。気のせいならいいんだけど。