前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
手紙を読み終えた俺は机上にそれを置くと、鈴理先輩から借りている携帯を取り出し、彼女にメールをした。
しごく他愛も無いメール内容で、俺は彼女に今週の日曜日は空いているか? と尋ねた。
すぐにメールが返ってくる。
答えはノーだった。
どうやら用事があるらしい。
謝罪文が綴られているメールに、俺は苦笑して返信した。『気にしていませんよ』と。
携帯を閉じると俺はカレンダーの前に立って、
「確か土曜日が給料日だったな。手渡しだから振込みとか関係なんだよな」
初給料日だと綻んだ。
三万はもらえる筈だから、二万は家に入れて、一万は俺の手元に置かせてもらおう。
「だから先輩達…、ほんっと優しい人達なんっすね」
いつまでもカレンダーを見つめた俺は、自分の感情を押し殺して必死に笑顔を作った。
嗚呼、いつかは来るかもしれない。
そう懸念していた現実がこうもまざまざと俺を蔑視している。
行き場のない感情を散らすために、俺は心に決める。
せめて先輩達の前では笑顔を作る努力をしよう、と。
机上に置いている手紙に俺は視線を流す。
あれはただの手紙じゃなかった。
俺は今週の日曜、あれを持ってお祝いに行かないといけない。