前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
02. 豊福家の目の前は真っ暗になった
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それから数日後。
すべてのテストを受け終わった俺は、ようやく解放されたと自由を噛み締めていた。
テストの結果はさておき、まずまずの手ごたえは感じている。
苦手としている化学も乗り越えたし、得意の英語と数学もいいかんじに解けた。悪い点は取らないだろう。
俺と一緒に勉強したエビくんも今回は前回以上に良い点数を期待できそうだって満足げな顔をしていたし、アジくんは……、あー、真っ白な灰になっていた。
連日のようにテスト勉強をしていた疲労がテスト終了後にドッと溢れかえったようだ。
もう駄目、家に帰ったら寝る。直寝すると机に伏せていた。
徹夜してまで頑張ったみたい。うん、お疲れ、アジくん。今日から枕を高くして寝れるよ。
という俺もちょっち寝不足だったりする。家に帰ったら寝たいけど、今日はバイトだ。平日だけど、主婦の方に代理を頼まれたんだよな。
だから俺は学校が終わると、その足で勤務先の“いづ屋”へ。
午後四時から閉店八時までの四時間、しっかり働いて稼いだ。
少しでもお金はあった方がいいもんな。あって困るもんじゃないもん。
バイトを終えると、俺は店主の伊草さんに売れ残ったおはぎを貰った。
青海苔タイプときなこタイプの二つを貰って俺は超ご満悦。
両親と一緒に食べようと軽快な足取りで帰宅した。
が、家に帰るとびっくら仰天することになる。
何故かって居間にいた父さんと母さんの空気が重かったからだ。
睦ましい仲だって知っていたからこそ、居間の空気には戸惑ってしまう。それこそ圧死しそうな空気だったんだ。
どうしたのかな、喧嘩でもしたのかな、探りを入れるためにもおずおずと俺は両親にただいまっと挨拶する。
ちゃぶ台を見つめていた二人が顔を上げた。
んでもって疲労した顔でおかえりと挨拶を返されるんだけど、えーっと空気は重いまま。