前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
ますます戸惑う俺は何か遭った? と二人に疑問を投げかける。
何もないと即答されたけど、ぜってぇ嘘だろ。空気の重さが半端ねぇもん!
父さんだって俺よりに帰宅しているなんて珍しいし、母さんだって切羽詰った顔しているし。
好からぬことでもあったんじゃないかって思うのが筋だ。
すぐにでも追究したかったけど両親の背中が何も聞くなって言っていたから、俺はバイト先でおはぎを貰ったことを報告して空気の緩和を努めた。
嬉しそうに喜んでくれる両親の顔に翳(かげ)がある。夕飯中もこの空気だった。
これは豊福家にとって芳しくない事態が起きたに違いない。
夕飯後、俺は意を決して両親に再び聞いた。
「何か遭ったんでしょ?」と。
両親至上主義の俺の目は誤魔化せない。
伊達に二人の息子をしているわけじゃないんだ。
何か遭ったなら言って欲しい。
子供の出る幕じゃないって言われても、家庭の事情を把握して気遣うことくらい可能だ。俺はもう二人が思うほど子供じゃない。
正座して真っ直ぐ両親に説明を求めると、「やっぱり弁護士に相談しましょう」母さんがいきり立った。
これは何かの間違い、きっと弁護士に相談すれば良い知恵を頂ける! とかなんとか言う母さんに俺は目を点にした。
ちっとも話についていけないんだけど。
「落ち着け。久仁子」
父さんが宥めると、「空さんは私達の息子です」息子なんですよ、とシクシク泣き始めた。
どうして空気が重い⇒両親沈鬱⇒俺、質問⇒空さんは息子なんですシクシクの流れになるのか、まーったく分からない。
目を白黒させていると、「すまないな久仁子」自分がしっかりしていなかったばっかりにと父さんも肩を落とす。
ちょ、置いて行かないで。息子だけ蚊帳の外なんだけど。
困惑しきっている俺は両親をぽかーんと見つめ続けた。
その視線に耐えかねたのか、父さんが観念して重い口を開く。