前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
前略、俺を婿養子(仮)として出す決意をしてくれた父さん、母さん。
あなた方の息子は御堂家の婚約者として第一歩を踏み出そうとしています。
あの時は流れに任せて、向こうによろしくお願いしますと頭を下げたのですが、基本的に婚約者って何をすればいいのでしょうね?
取り敢えず学校の勉強は頑張らないといけないのは分かっています。
今までどおり、補助奨学生としてテストでは学年上位を狙っていこうと思います。
けれどそれだけじゃ駄目なのも分かっています。
英会話でも習うべきなのでしょうか?
国際共通語くらいは喋れないと婚約者としてやっていけないと思うのです。
グローバル化が進む世の中ですからね。
経済の勉強と並行して英語にも力を入れようかと念頭に置き始めました。
しかし独学では無理があります。向こうの親御さまに頼めば講師をつけてくれるでしょうか?
以後、御堂先輩に相談してみたいと思います。
さて話は変わり、俺は家を出ることになりましたね、父さん母さん。
婚約したとはいえ一応、借金の件がありますので、踏み倒される可能性があると懸念されているのか。はたまた信用されていないのか。
平日は御堂家にお邪魔することになりました。
所謂居候です。
だけど今までどおり、社会勉強の一環としてバイトに勤しむ許可もして貰いましたし、住まいは変わっても生活はさほど変わらないでしょう。
土日は家に帰宅できる許可も頂戴しましたし、だからその、そのー。
「母さん、そんなに泣かないでよ。永遠に会えないわけじゃないんだよ」
グズグズと涙を流している母さんがティッシュを目頭に押し当てていた。
こんなことになるなら、もっと我が儘を聞いておけば良かった。
なーんて泣き言を漏らしては涙の量を増やす。
荷造りをしていた俺は、苦笑して土日には帰って来るからと母さんに声を掛けた。