前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
約15分、車に揺られた俺は婚約者宅に到着する。
お金持ちだし、きっとでっかーい家なんだろうなぁって簡単に想像はしていたんだけど、本当にどでかくて固まってしまったのはこの直後。
鈴理先輩の家もでかかったけど、それに負けないくらい御堂先輩の家もでかかった。
ででーんと現れた屋敷を見上げた俺は「……」言葉も出ない。
まるで時代劇に出てきそうなお屋敷だな。立派も立派だ。
まずこの出入り口の門がでかいのなんのって、寺の門みたいにがっしりしている。
左右を見てみると長いながい瓦付き塀がそびえ立っていた。
真っ白な塀は雨風によって薄汚れていたけれど、それさえ風流を感じさせてくれるのは、この屋敷が歴史を感じさせてくれるからだろう。
元々は武家屋敷だったのかな? 此処。
御堂先輩自身、クオーターだから洋風の屋敷に住んでいると勝手な想像をしていたけど、これはこれで凄いよな。
やっぱ御堂先輩はお嬢様だ。
周囲にマンションやアパートが見えるけど、それらが霞んで見えらぁ。
敷地に入ると、早速松を手入れしている庭師を見受けた。
愛想よく挨拶してきてくれたから、俺も会釈して挨拶する。
よく目を凝らせば数人の庭師が、それぞれの木々に鋏を入れていた。
御堂家専門の庭師達だろうか?
庶民の俺には何で庭師がこんなにいるのか、理由さえ見つけられなかった。
玄関まで続く石畳の道を歩き、俺は蘭子さんの案内の下、屋敷の中に足を踏み入れる。
お邪魔します。そう挨拶する前に、数人の着物を来た召使さん方にお帰りなさいと出迎えてきたため、俺はびびって挨拶を呑んでしまう。
蘭子さんを含む召使さん男女も着物を着ているんだけど。
まるで旅館みたいだな。
毎度こんな挨拶されているんだろうか? 御堂先輩家族は。
「只今帰りました」
蘭子さんは各々召使さん方に挨拶すると、
「こちらが空さまです」
丁重にもてなして下さいね、と言った。
我に返った俺はお世話になりますと召使さん方に挨拶。
「男の子の方なんて奇跡ですね!」
口々に反応されたのはこの直後だったりする。
そーろそろ慣れてきたぞ、このリアクションにも。
引き攣り笑いを浮かべる俺を余所に、
「まずはお部屋にご案内しましょう」
さあ此方で、蘭子さんが誘導してくれた。
召使さん方に頭を下げて俺はおずおずと屋敷を突き進む。