前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
05. 「俺の人生は御堂家のものっす」
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財閥会合は散々だった。
俺の財閥デビューは大注目のオンパレード。
あの男嫌いの御堂玲に婚約者ができただの、相手はエレガンス学院の生徒だの、会議室で独占欲を見せ付けただの、騒ぎが立ってしまい落ち着く場もなかった。
御堂先輩がまさか公の場でキスを仕掛けてくるなんて思いもしなかったよ。
彼女とのキスは今回が二度目だけれど、まさか人の目があるところでキスをしてくるなんて。
いや鈴理先輩の時も対して変わらなかったけれど、でも、でもさぁ!
確実にファンには殺されるだろう。
一人になったところを狙って階段から突き落とされるかもしれない。まじで。
プリンセスもその可能性を見出していたのか、御堂先輩がその場で、「婚約者を傷付ける輩がいたら」僕が直々に手を下してやる、と公言していた。
おかげで熱愛報道が財閥間で流れちまった。どうしてこうなった? もっと穏便に済ますつもりだったのに。
メインの会合は蘭子さんの言うとおり、日本の経済について。
各財閥の財政状態と照らし合わせながら今後の行く末を想定する、というものだった。
遺憾なことに俺の経済学は非常に乏しい。
したがって長中期利益計画とか、バリューチェーンとか、SWOT分析とか専門用語を言われてもチンプンカンプンである。
終幕に連れて頭から湯気が出そうだった。取り敢えずルーズリーフにメモはしたけど、分からない単語が多すぎて終了同時に机に撃沈。自分の無能さに嘆いた。
御堂先輩にはこれからだと励まされたけれど、それにしたってこれは酷いと思う。
勉強面に関しては非常に負けず嫌いなため、悔しさを隠し切れない。家に帰ったら早速御堂先輩に教えてもらおうと意気込んだ。
そうそう、鈴理先輩達とは結局話せないままだ。
話す前に会合の時間が来たんだ。離れて座ったからろくすっぽう顔も合わせていない。
だからってこれで終わるとも思えない。
会合中、チラッとこっちを窺ってきた大雅先輩と目が合い、察してしまったんだ。
終わり次第問い詰められるな、と。