前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
な、何を言い出すんっすか。
主婦戦争という名のタイムセールを舐めてるんっすか?!
右も左も知らない嬢ちゃん坊ちゃんが参戦すれば、揉みくちゃにされること間違いないっすよ!
下手すれば怪我しかねないっす!
俺はやめた方が良いと助言する。
川島先輩も同調し、やめとけやめとけとヒラヒラ手を振って肩を竦める。
「あんた達が激安商品をゲットできるわけないじゃん。箱入り娘息子は大人しく此処にいなって」
どーせあんた達、苦労もせず物買えるんだし? 泣いて帰って来るのがオチだって。
何処となく挑発的な口調でにやりと川島先輩は一笑。
ちょ、そんなこと言ったら…。
「言いやがったな川島っ…、よーし、ゲットしてきてやろうじゃねえか! 泣いて帰って来る? ほざけ!」
地団太を踏む大雅先輩に、
「早苗…、あたしに向かってそのような侮辱っ…、空、あのチラシを貸せ! 激安商品とやらっ、ゲットしてやる! 庶民の主婦が出来るのだ。あたしができないわけないだろう!」
青筋を立てる鈴理先輩、
「まあ、そんなに凄いのですの? でも努力すれば一つくらい取れますよ。わたくしもチラシ、見せて下さいな」
心配には及ばないと笑声を漏らす宇津木先輩。
………、あーあ、宇津木先輩はともかく、あたし様と俺様の闘争心に火が点いた。
川島先輩、絶対狙ったでしょ?
これはお遊びじゃないんっすけど。
溜息をついて額に手を当てる俺の隣で、先輩方がチラシを拝見。ふむふむと頷いて、各々これだと決める。
こうなったら最後、止めても無駄だろうから連れて行くけど……、本当に大丈夫かな、俺、自分のことで手一杯だから先輩達のフォローなんてできないっすよ。
ということで時間も無いので、川島先輩を残して俺達は下車。
いざスーパーへと足を運ぼうとしたんだけど、駐車場に一際目立つ高級車が俺等の前に停まってきた。
俺達の乗っていた高級車も、そりゃあ目立つんだけどさ、光沢帯びたボディを放つその車もなかなかに目立つ。