前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
木枯らしが姿を消し、春一番が拭き始めたある日、中学生は図書館を訪れなくなった。
最初こそ体調不良なのかと思っていたが、毎日まいにち待っても中学生は来ない。
ああ、そういえばもう受験シーズンは終わる。
きっと彼も受験を終えたのだろう。
合格したのだろうか、それとも不合格だったのだろうか。
職員も中学生の姿が見えなくなったことに寂しいと言っていたが、それも最初の内だけだった。
鈴理はいつまでも待っていた。
いつものように学校を終え、市民図書館に赴き、彼を待つ。
来なくても翌日に待ってみる。
諦め悪く翌々日も待ってみる。
待つことしか出来なかった。
名も知らない彼のことを待つことしか、鈴理にはできなかったのだ。
「今日も来ないか。職を探しているのかもしれんな。落ちたらバイトをすると言っていたし」
けれどいつか、此処を訪れてくれるんじゃ。
その思いが勝って鈴理は待っていた。
彼と再会するまでずっと、そう、ずっと。