前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「いつもの凄まじい行動力はどうした? 最近のお前、超おとなしかった。
らしくねぇよ。
お前なら豊福から友人でいようって言われても、突っ走って相手を物にすると思っていたけど、全然だったじゃねえか。
……それって家族のことがあってだろ? けど俺達が結婚して財閥が幸せかって言ったら、絶対そうとも限らねぇ。絶対なんてねぇ。
どうする? 二階堂家と御堂家、どっちも破産したら。
それこそ俺とお前で借金生活だ!
そういう未来がないとも限らないぜ? つまり何が起きるか分からないってことだ」
「……大雅」
「手前の人生だ。お前の好きにしていいんじゃね?
どうする、鈴理。
全部を諦めて婚約者の俺に抱かれるか。それとも手前で決めて、俺と結果を出してみるか。成功したら万々歳。失敗したら、あー、しゃーねぇから優しく抱いてやる」
「このままじゃお前は後悔するぜ?」自分で決めない人生を歩んじまったらさ。我の強いお前だ。他人に人生決められちゃ癪だろ?
呆けつつも静聴している鈴理にそう告げると、飲みかけのイチゴミルクオレに手を伸ばした。
まったく健気にも元カレの好きなものを飲んでいるようだが、やっていることが無いものねだりだ。
らしくない。
鈴理はもっと行動力のある我が儘お嬢様なのだ。
欲しいなら欲しいなりの行動を示せばいい。今までのように。
「豊福はどうしょうもねえ」
あいつは既に雁字搦めの環境にある。努力じゃどうしようもない域だ。
「でも俺達はまだちげぇだろ? まだお前は間に合う。よーく考えて決めろ、鈴理。お前自身の中でどうしてぇか。その答えによっちゃ一緒に付き合ってやるさ」
相手の反応を見ず、大雅はグラスの中身を飲み干す。
口内に広がる甘さに思わず、「番茶が飲みてぇ」と零してしまった。