前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
「ほら今、こうして感じあっているのは君と僕」
この瞬間だけは、完全に僕のもの。
甘酸っぱい台詞を吐く王子は、俺の手をやんわり退けて柔らかな唇を重ねる。
触れるだけのキスでは終わらせてくれない。
御堂先輩はまるで今まで抑えていた自分の激情を俺にぶつけるように、濃厚でディープなキスを仕掛けてくる。
顔を背けることを許さず、押さえつけるように固定してキスの角度を変えてきた。
喉を鳴らして息苦しさを訴えるのに彼女は目で笑うだけ。
キスは深くなるばかりだ。
互いに交わしている音が鼓膜を波打たせる。
「っ…」呼吸の苦しさから生理的に涙目になる。
揺れる視界の向こうで、彼女が俺の指と自分の指を絡めて拘束していた。
嗚呼、囚 わ れ た 。
そんな錯覚に陥る。
丹念に唇を舐め、俺と距離を置いて、御堂先輩が顔を覗き込んでくる。
彷彿と荒呼吸を繰り返している俺に一笑し、「まだ解放してやらない」濡れそぼった耳元で囁いてくる。
そのまま弱いと判断した右耳を一舐め。
意識とは関係なく体が跳ねた。
「そう、もっと感じて豊福。沢山感じて、そして僕を覚えて―――…好きだよ」
真摯な気持ちが俺の心を震わせた。
「貴方は俺にとって守りたい人。必ず守ります。必ず」
微笑みでその気持ちに応える。
俺もだよ、だなんて、そんなうそを言っても彼女は喜ばない。
それを知っているから、笑みで返すんだ。
この表情に嘘偽りはないから。