前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
07. 草食、婚約者を知る(後)
「トロくん。これ、どうやってメアドを送るの? 俺、機械音痴だから全然分からないんだけど」
「ちょい貸してみぃ」
トロくんとメアド交換をしようとしていた俺は、早速出だしから躓いてスマホを彼に託していた。
彼はまだ従来の携帯を使っているというのに、手馴れた手つきでスマホを操作していく。
すっごいよな。人のスマホだってのに普通に操作できてらぁ。
なんで操作できるんだ?
俺なんて従来の携帯でアップアップ。スマホとか未知な領域すぎて頭がこんがらがるってのに。
「トロくん天才?」俺の褒めに、「今更気付いたんか?」オレは天才なんやで、と彼が鼻高々に笑った。
「機械はむっちゃ強いんや。一応これでも情報系の科に通っとるさかい、機械のことなら何でも聞いてや」
「へえ、凄いなぁ! 俺は機械がてんで駄目でさ。今度から何か分からなかったらトロくんに聞くよ」
するとトロくんがタダでは教えないと片手の平を見せ付けてきた。
「ええ?」声を上げる俺に、「教える代わりに」豊福はオレに男を教えてくれや、と申し出てくる。
男?
え、オトコ?
目を丸くする俺に、「聞いたで聞いたで」彼は人の首に腕を絡めて口角をつり上げてくる。
「さっきこっそり花畑から聞いたんや。豊福、ウケオトコなんやて? ちなみにウケるオトコちゃうよな?」
「え、あ、うん。そういう意味じゃないけど」
「ウケオトコゆーたら、女の子にあーんなことやこーんなことをされてウハウハするオトコのことを指すんやろ? 豊福それなんやろ?」
さも俺が攻められてウハウハしているような言い方だけど、それは心外だからねトロくん!
俺は攻め女に否応無しにポジションを奪われているだけであって(譲っているとも言う)、リード権を奪われていることに喜んでいるわけじゃないんだよ!
無理だと分かっていてもやっぱり男としてリードしたいって気持ちはあるんだよ、YO!
だけどトロくんは俺の抗議なんて聞いちゃない。
目をらんらんに輝かせて、「ディープされるんやろ?」ボディタッチをされたり、押し倒されたりするんやろ? と詰め寄ってくる。
「そ、そりゃ。されるけど……」
でも自尊心も傷付くよ?
トロくんに助言しても彼は恍惚に目を輝かせるだけだ。