前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
更に言えば、あー、なんだ。
さと子ちゃんは俺と御堂先輩が仲良くする姿をあーんま宜しく思っていないらしく、その光景をジトーッと観察してくる。
うぐっ、この背徳感は拭うことができないし、反論することも注意をすることも不可だ。
よって俺は肩身の狭い思いをすることしかできない。
しょうがないと分かっていつつも、こればっかしはなんだかなぁ。
さと子ちゃんに事がばれている以上、俺はもう先に進むしかないと考えていた。
学校に行く前、俺は蘭子さんに頼んで雑巾を貸してもらい、念入りに机とテーブルを拭いた。
持ってきた教科書は鞄に、家庭教師で使っている参考書は綺麗に机の本棚スペースに並べておく。
机に飾っていた写真立て二枚も、各々眺めた後、中に仕舞った。
これは何より俺の大切な宝物。
大事なことをする今だからこそ、俺の支えになって欲しい。
重たい通学鞄をからって小さく表情を崩す俺は、外で待っているであろう車に早く乗り込もうと駆け出した。
「あ」途中でUSBメモリの存在を思い出し、俺は踵返す。
いっけね、あれがいっちゃん重要なのに。
なんで忘れちまうのかな、俺。
早足で廊下を駆け抜け、自室に戻って机の引き出しを開ける。
二つのUSBメモリが顔を出した。
両方引っ掴んで今度こそ自室を飛び出す。
さと子ちゃんにぶつかりそうになったから、それは謝って(素っ気無く返されたけど)、バタバタと玄関へ。
待たせている車に悪いからと、さっさローファーを履いて外に出る。
門向こうではきっと御堂先輩が待ちくたびれていることだろう。
「って、あれ。あそこにいるのは博紀さんじゃん」
朝から庭園の手入れでもしているのだろうか? 外に出て掃き掃除をしている。
角の向こうに消える博紀さんを追ったのはこの直後。
挨拶くらいはしておこう。
USBメモリのお礼も、もう一度言っておかないと。
そう思って後を追った。
足を止めてしまったのはこれまたすぐのことだった。