前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
11. Paradise Lost-交差-
【(仮)空の部屋・浴室にて】
「すげくね空。この泡立ち! アメリカ製の泡入浴剤って超あわあわするんだな! ははっ、すげぇすげぇ」
「え、あ、うん。そうだね」
「バッカ。滅多にお目に掛かれない泡風呂だぜ? もっとテンション上げろって」
泡を掬ってふーっと宙に飛ばすイチゴくんの異様なハイテンションに俺は溜息をついた。
いやさ、俺だってテンション上げたいよ?
実は泡風呂って初めてだからさ、「うっわぁすげぇ!」とか声を上げてテンションアゲアゲにしたいのは山々。心行くまで泡と戯れたいのも本心。
このきめ細かい泡達を見よ。
風呂に浮かぶ泡が俺達を包み込み、浸かるだけで清めてくれるような、優しい感触。
これが噂に聞く泡風呂か! と喜色溢れた声を上げたくなる。
だどもですね、イチゴくん。
「……野郎二人で風呂って無理がない?」
そう、只今豊福空は花畑イチゴ、あ、間違った。
花畑翼と同じ浴槽に肩まで使っている状況下なのでありまする。
お金持ちさんが用意したバスルームなだけに、浴槽は平均よりも広い。
俺とイチゴくんが正座して浴槽に浸かれば、あらあらまあまあ、二人は余裕なんだぜべいべ。
だがしかし、何故に俺は彼と共に風呂、しかも泡風呂に浸からなければならないのだろうか。
未だ戻ってきていない博紀さんがこの状況を見たらさぞ肝を飛び上がらせることだろう。悪い意味で。
イチゴくんはリラックスのためだと言って、わざわざ風呂にお湯を張ったわけだけど(しかもミラーキャビネットから泡入浴剤を見つけて勝手に使用する始末)。
何か意図しての行動なのだろうか?
ぬるま湯の温度に物足りなさを覚えながら首を傾げる。
「空食らえ、バブルこうせん!」
「え、うわっち!」
両手で掬った泡を叩いて爆ぜさせるイチゴくんのせいで、俺は泡を頭から引っかぶってしまう。
「ははっ、ダッセェ姿!」
ださっ……、ええいよくも!
俺もバブルこうせん返しをしてやる!
ムキになり、ついつい泡を掬ってイチゴくんに飛ばす。
「やったな!」俺はもっと凄いのを飛ばしてやると宣戦布告され、俺も負けじと泡をかき集める。
こうして俺はイチゴくんと泡戦争を勃発させた。心行くまで泡を飛ばしあう。
そりゃもう楽しいのなんのって楽しいんです。
はい、男子って所詮馬鹿な生き物なんです。
女子から幼稚でガキと言われても仕方がない生き物なんです。俺もその類なんです。
だって俺も男の子! 楽しいもんは楽しい!