前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―
XX.いつも、信じて生きる
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前略、今日(こんにち)も日本国という不況大国で働いている父さま、母さま。
あなた方の三番娘、竹之内鈴理は今日もわが道を貫いている次第です。
もうお分かりでしょうが、あたしはあたしのしたいようにする。人の指図は受けない。
そういうハスッパ娘なのであります。
財閥の令嬢?
そんなの知るかという話です。
あたしは好きで令嬢に生まれてきたわけじゃない。
あたしの人生はあたしが決める。
だってあたし自身の人生ですから。
「―――鈴理。待たせたね」
Mック店で待ち合わせをしていたあたしは約束していた幼馴染の声に反応し、読んでいた文庫を閉じる。
「あたしを待たせるなんていい度胸だぞ」
ぶう垂れると、「ごめんごめん」素敵なお嬢さんに声を掛けられてしまったね、悪びれた様子もなくウィンクしてきた。
ということは学校で女を口説いていたな?
婚約者がいるくせに腹立たしい。
ま、こいつの女を口説く癖は一種の日課だからな。
男が寄ってきたら容赦ない張り手を飛ばすくせに。
トレイを片手に向かい側へ腰掛ける玲は、それを置くと早速チキンフィレを手に取り、包装紙を剥き始める。
既にバーガーを食べ終えているあたしは冷え始めたポテトに手を伸ばし、彼女と共に食事の時間を堪能する。
ファーストフード店なんて滅多に来ないものだから、こういうジャンクフードは新鮮だ。
「ん、イケる」
安価ながらいけるお味だと、指についたソースを舐める玲。
傍から見れば異性と和気藹々食事をしているように見えるこの光景だが、あたし達は同性であり、目前の学ランは男装少女だ。
玲は今日も変わらず男装を好んでいる。
きっとこれから先も男装をやめる気はないだろう。
二十歳になった頃のこいつが見物だな。
「随分、マシな面になったな。あんたに婚約破棄の報告をした時は通夜のような顔をしていたというのに」
挨拶がてらに嫌味を放つと、痛くも痒くもなさそうに玲が肩を竦める。
「なあにが婚約破棄だ。仮じゃないか。自動車免許で例えるなら、仮免をパスし本免には受かっていない。それをドヤ顔で報告されてもねぇ」
立ち直った途端これだ。
あたしは口元を引き攣らせ、相手を見据える。
「人の努力を一瞬にして砕くような発言をするとはいい度胸だ。泣かすぞ」
「へえ? 君が僕を? 面白い冗談だね」
「あたしはいつだって本気なのだが?」