多々なる世界の〇〇屋【企画】
「誰だ、お前」
黒田と『黒田』が完璧に同一人物ではないと確信した桜羽は、思い切って黒田に聞いてみる。
「お前・・・本当は『黒田』って名前じゃねぇんだろ」
問い詰めるように言ってやると、黒田は「ああ」と冷静さを保った声で答える。
「私は黒田 文香の親友。木戸 鞠乃だ」
木戸、と名乗った黒田を見て、桜羽はあの百合の飾られた机を思い出した。
「私が過去にやってきた理由は、死亡したはずの親友の命日に戻って、「黒田は死んだ」っていう過去を帳消し、つまり、生き返らせるために来たんだ」
時を利用するのには完璧な手か、と桜羽は半ば納得する。
「この時、学校で私の席に鼻が飾られていたのは、私が死んだって思われてたからだ」
「死んでないのか」
「まぁ、半死半生、植物人間って所だ。数週間前、休日にトラックに撥ねられて意識不明状態。丁度、今日の夜中に私は目を覚ましたんだけど、そのときには、文香のほうがおさらばしちゃってな」