多々なる世界の〇〇屋【企画】
弐:【不治病治療屋】
霧雨(きりさめ)羅李(らい)は、学校帰りにいつも通院している病院へと足を運ぶ。
高校2年生、背も高くルックスも悪くない、頭脳も明晰なほうなのだが、残念ながら難治性の喘息持ちで、こうして通院している。
難治性、といっても、それは羅李の治せない方「不治の病の原因となる病魔」が原因なのではなく、単に生まれつきなのだ。
「で、また来たのか。羅李」
「ああ、いつもの薬で頼む」
椅子にドカッと座り、見慣れた病院の中を見回す。もうずっと通っている病院なので、院長も羅李もお互いタメ口だ。(いや、それはある意味、羅李の俺様な口調も、タメ口の理由に入っているのだろう)
「しかし、こんな喘息があったら、不治病治療屋とか、大変だろうな」
「別に大変ではないぞ」
「嘘付け。この喘息で、お前何度ピンチに追いやられた?」
「俺が負けた、みたいなことを言うでない。ちゃんと生きておろうが」
「わるい、わるい」
院長は笑いながら禿げかけた頭を掻く。
「・・・またずいぶんと、頭に磨きがかかったな」
「失礼な事言うな」
院長はムッとして頭を隠す。