多々なる世界の〇〇屋【企画】
壱:【時世逆流屋】
桜羽は目の前の客に目をやる。
髪の毛をぼさぼさに伸ばし、女っ気が無く、無人島で長い年月を過ごしてきた人間にも見えた。
女は桜羽と同じ17歳と見え、髪の毛の間からすぅっと小さな瞳が見える。彼女は「黒田」と名乗った。
「赤褐色の髪の毛に・・・碧眼」
黒田は桜羽を見てそう呟く。
「間違いない。時世逆流屋だな?」
「ああ。依頼か?」
聞くと、黒田は、ああ、とだけ呟き、感情のこもっていない声で言う。
桜羽もよく感情がこもっていないと言われるが、彼にとっては感情がこもっていないのではなく、単に冷たいでけなのだと。
桜羽はジッと黒田の小さな瞳を見つめる。強い光沢を放つ瞳が自分、自分の着ている和服、虹彩さえも映し出しているように見えた。
(・・・けっ。気味悪ぃ女だ)
かたっぱしからタメ口だしよ。
桜羽の思っていることが伝わってしまったのか、黒田は眉をひそめた。