多々なる世界の〇〇屋【企画】
「そうなの」
寿恵は老女に感謝した。「娘」と言う言葉でなく「澪」という弘前の名前まで出してくれるとは思わなかった。
後は自分でやろうと思っていたが、手間が省ける。
岡本の濁した言葉と、あの戸惑い方と動揺振りを見て、寿恵はあることに気付いた。
(もしかして・・・)
もう一度、岡本の中を覗き込んでみる。
一度出かけた芽が引っ込んでしまっていた。そこで寿恵は、本当はもうすでに娘のことを思い出していたのだと分かる。
問題は、芽のことだ。
芽が引っ込もうとしているのは、岡本が何かを押さえ込んでいる証拠である。
弘前に会いたくない、母子の関係に戻りたくない理由があるはずだ。
(・・・そこまでして会いたくない理由・・・)
親子の仲をいとも簡単に崩せる物。
寿恵は「あ」と思い浮かんだ。「もしかして」
寿恵はすぐさま走り出し、警察署へと向かった。