多々なる世界の〇〇屋【企画】



「ああ、あったあった」

刑事の中でも、よく自分に協力してくれる刑事が、ある資料を持ってきた。

「これだよ、これ」

寿恵はもらった資料に目を通す。

殺人事件の資料だった。

「岡本っていう若い女性でね・・・。夫から暴力を受けていたらしくて、そんで、ある日ひどい事をされそうになって、刺し殺したんだってね」

十数年前の資料だった。血痕や刃物、指紋や髪の毛などが映っている。

「刑事・・・」
「ん?」
「この女性に、子供は?」
「んー・・・いたっぽいけど、岡本って人が逮捕された時には、いなかったよ」
「どうして」
「さぁ。そこんとこ、彼女はなんも喋らなかったらしいし」
「・・・そっか」

資料を刑事に返すと、寿恵は立ち上がった。

「また、仕事か?」
「うん」

おつかれさん、と刑事に言われ、寿恵は「ありがと」と返した。

警察署を出て、寿恵はそのまま大通りを歩いた。


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