多々なる世界の〇〇屋【企画】

――

中学校の屋上では、強い風が吹いており、手先が痛くなった。12月中旬なのか、今にも雪がちらつきそうである。

バサバサと無造作に揺れる黒田の髪の毛は、生き物のようにうねり、蛇にも見えた。脱色したように色白の肌と、小さな目が露になる。


「ここから、2階に降りよう」


この学校を知っているのか、黒田は手招きしながら下に降りる。


2階まで行くと、キョロキョロと誰かを探し始めた。廊下に張り出されたクラス表に目をやってみる。


(・・・ん?)


あるクラス表を見て、桜羽は1つ気にかかることを見つけた。

ネームペンで消された「木戸」という名前だった。なぜ消されているのだろう、と桜羽は不思議に思う。

そっと教室を覗いてみると、中心の列の一番後ろの席に、百合が花瓶とともに飾られている。


「おい」


桜羽は黒田を呼んでみた。



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