多々なる世界の〇〇屋【企画】
「ところで」
彼女は、早速話題を持ち出した。
「君は何に悩んでる」
「え?」
「何に悩んでるんだ」
「・・・」
いきなりそれを言われ、晴明は少し戸惑ってからコップを置いた。
「・・・人生に」
「人生?」
「人生に絶望してるんです」
これはまた不思議なことを言う。
時乃は首をかしげた。
「主に?」
「境遇とか、未来とか、世の中とか」
「・・・いじめにあってる?」
「いえ・・・。ただ」
「ただ」
「親なんですよ、問題は・・・」
なるほど、親か。
時乃は小さくうなづくと「どこが嫌なんだ?」と問うた。
「俺の家、名門なんですよ」
「そうなんだ。別に悪い事じゃないと思うけど」
「ここからなんですって。・・・父親は、俺がどれだけすごい成果を挙げても、それを当たり前のように言うし・・・母親は死んじゃってるし・・・それに」
「それに」
「近いうちに、知り合いの金持ちの娘とお見合いをすることになってるんです」
晴明は苦々しそうに言った。
もしかして・・・彼女は都市伝説に聞く「迷子屋」なのか?
そんな思いが頭を過ぎる。