多々なる世界の〇〇屋【企画】
「あの人たちにとって・・・俺って何?」
独り言を、あたかも周りの人間にぶつけるような口調で言った。
「俺は、ただのあとを継ぐための・・・地位を上げるためだけの道具ですか?・・・俺は、これだけ縛られているのに、自由な時間さえ・・・」
泣き声であった。
容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群のこの細い少年の中には、自分では抑えきれない、はち切れそうなほどの我慢があった。
これまで幾度と無くその心に眠る「迷路」を見てきた時乃だが、こうも複雑怪奇な迷路を見たのは始めてである。
彼は、身分の高い境遇に逆に縛られている・・・失ってはならないものが多すぎるのだ。
「・・・よし、分かった」
「え?」
「考えよう。君の迷路の脱出法を」
―
「んー」
時乃は唸った。
彼の迷路には4つの出口があった。1つは自由になる、あとの3つは全て「家の跡継ぎ」とあった。
しかも、どういう道を辿っても、一向に自由にはたどり着けない。何をやってもどのルートを通っても、跡を継ぐ以外の方法しかなかった。
「困ったなぁ」
彼を跡継ぎの道から脱出させるには、やはりこの選択肢4つを捨て、新たな所へ踏み出ししかないようだ。