多々なる世界の〇〇屋【企画】
小さく、彼の中の記憶を辿ってみる。
幼い頃の・・・母がいた頃の彼は本当に泣き虫だった。
と言うことは、必然的に純粋に自分の欲望があった、縛られなかったという事になる。
(なるほど・・・)
母親が死に、父親に圧力をかけられているうちに、いつの間にか彼の中の人らしい心は亡くなってしまった、欲さえ感じなくなったという事か。
「お母さん!あれ何?」
知りたければ知る、欲しければ余計に欲しくなる。そんな欲が、消えたのだ。
母親が死んだ8歳のときから、縛られてきた。
入試では、国立の大学付属校。
卒業しても、身の上に悩まされる一方。
走行しているうちに、迷路に迷い込んでしまったのだろう。
「あ、あの・・・」
「ん?」
「何を見てたんですか」
「君の心の中だ」
時乃は顎に手を当てる。