多々なる世界の〇〇屋【企画】
「ねぇ」
時乃は、小さく晴明に声をかける。
「いっそのこと、加茂 忠行の弟子になって陰陽師になっちゃえば?」
「なんなんすかそれ、そのひどい冗談は、馬鹿にしてんすか」
「受け止めるなよ、冗談だって」
晴明があまりにも眉を下げすぎだので、時乃は引き下がるようにして言う。
(だとしたら・・・やっぱり、お見合いを潰すしかないか)
ふとあることを思いつき、時乃は小さな水晶玉にブツブツと何か呟いた。そして窓側を指差す。
「晴明のお見合い相手を調べてきてくれ」
そう言うと、水晶玉は自動的に転がって窓を通って外に出た。
風で黒いカーテンがあき、光が差し込んできた。
「わぁぁおぅ・・・!」
時乃は驚いてサッとカーテンと窓を閉める。
「どうしたんですか・・・」
「いや、僕、光はどうも苦手で・・・」
「そうですか・・・」
時乃はもう一度椅子に座り直すと、頭の中であの水晶玉の念をキャッチした。今ごろ、あれはお見合い相手の家の中だろう。
『私・・・やっぱり嫌』
娘の声が聞こえる。さらに、頭の中に着物を親と選ぶ姿があった。
『何を言ってるんだね。安陪さんの所とは古い付き合いなんだ。あとはお前が考えなさい』
『私は、ちゃんと好きな人がいるの。だから、お見合いも嫌』
あらま、と時乃は思う。