多々なる世界の〇〇屋【企画】
幼い子供らしい発想をさっそくぶつけると、晴明は「ええっ?」と目を丸くした。
「つまり、君は何処かの寮付きの仕事場で働けばいい。モデルとか、工場職員とか」
「そ・・・それって、上手く見つかるもんですかね・・・」
「見つかるとかじゃないっちゅーのっ!」
「は、はいぃっ!」
晴明はピンと背伸びをする。
「早めのうちに考えておきなよ。あ、それと」
時乃はクルリと振り返り、最も重要な事を口にした。
「迷路にて、一番邪魔なのは迷いだ。迷いと優柔不断を捨てろ。それさえできれば、君はきっと自由になれる」
微笑してから「君は、どうしたいの?」と聞いた。
「あ、え・・・俺は・・・」
俺は――。
晴明は、あ、と思う。幼い頃の記憶が不意に蘇った。知りたいことは知り、欲しいものは手に入れるという、欲が溢れる。
「俺は――自由になりたい」
晴明は小さく目を開いた。
「そう・・・か」
胸の当たりを小さく押さえてから「ありがとうございます」と頭を下げた。霧の中に、彼の姿が溶け込んでいく。
―
「あいつもやるなぁ」
寮付きのモデルで、彼は見事採用された。ということは、必然的に父親に逆らった事になる。
彼は以前よりも凛々しさが増し、ただの貧弱なイケメンではなくなったという事だ。
「陰陽師でも良かったと思うけれど」
時乃は「ははっ」と笑う。