多々なる世界の〇〇屋【企画】
「注文は決まったかい?」
「あ、私お刺身で・・・」
それを聞き、私は注文をメモしてから「待っていておくれ」と微笑み、ササッと厨房に向かった。
「おばちゃん、お刺身だってさ!」
「はいよぉ!」
数分してお刺身のお皿が出ると、私はお皿を手に飛んでいって、田村さんの所に向かう。
「お待ちどう様」
「どうも――」
「またくるのを、待っているよ」
自分の胸に軽く手を当て、執事のようなポーズを取ってから下がる。そして階段から窓を見る。
次にくるのは、王子様っ子の水上(みなかみ)さんだな。
私はクローゼットから王子様らしい服を取り出し、さっさと着こなす。王子様らしいパーマと色のかつらをかぶり、色白のパウダーをつけて、すぐに店に赴く。
「待っていましたよ、水上さん」
「あら、弥勒さん」
「また貴女の天使のような姿を拝めるなんて、嬉しいよ」
「まぁ、上手・・・♪」
そして、田村さんと同じ手順で接客。
このように、常連さんの好みに合わせた、紳士的な態度で接する事。これこそがダンディ。
まぁ、中学の時に「顔が男らしくてカッコイイ」と言われたのが始まりなのだが。
他にも、武士大好きな上野(うえの)さんや、草食系好きの市原(いちはら)さん、新撰組の土方歳三好きの佐原(さはら)さん、陰陽師大好きな三森(みもり)さんなどなど。
夜になってお客がだいぶん減ってきた頃、最後の客がやってきた。
大学生の秋菜(あきな)さんだ。
彼女は確か・・・執事が大好きなはず。
私はタキシードを着てオールバックにし、急いで降りていく。