多々なる世界の〇〇屋【企画】
六:【進路屋】
血まみれの少年は、不安定の乱れたペースで長距離を走り続けている。
ついさきほど、人を斬ったサバイバルナイフが入ったボストンバッグを携えて。
「追えっ、あっちへ行ったそうだぞ!」
少年が身を潜めるようにして逃走している裏の路地とは逆の、
街灯が夜でも照りつける表の参道のほうで轟く、警官の怒号。
それが少年の病弱そうな骨と皮ばかりの体に鞭を打つ。
(逃げなきゃ、逃げなきゃ!)
疑わしきを罰せず、とはよく言ったもので、殺人犯が無罪放免で釈放される方法は、
証拠不十分になることである。
しかし残念ながら、少年は物的証拠を肩にぶら下げて、挙句いかにも剣呑な姿でいる。
そしてそれを警察にもみられている。
言い訳も否認もできようものか。