多々なる世界の〇〇屋【企画】
「あんた、僕を捕まえてどうするつもりだ」
「どうするって、本物のワルだったらポリ公に届けるに決まってんだろう。
それ以外に何があるって?
そうだなあ、白装束に着替えさせて斬首とか」
「ふざけるな」
少年は己の立場をよく理解していながらも、相手に食ってかからんばかりの勢いで唸る。
「ふざけちゃいねえぜ。
悪人の進む道は塞ぐ。
善人の進む道は切り拓く。
それを金をもらって行うのが、この俺様の仕事よ」
「自分が正義の味方、とでも言うつもりか」
「いんや。
俺はどちらかというと善でも悪でもねえ、あまんじゃくだからよう。
仕事をもらえりゃ、やるだけさ」
男は妖しく笑い、せんべえの最後の一口を口の中に放り込んだ。
そして口に含んだそれを咀嚼し、また再び机の上に手を伸ばす。
「しっかし、おまえさん。
逃亡するってんならもう少しうまくやれよ。
まるでわざと、警察の目についたっておかしくねえような逃げ方をしてるみたいだぜ」
「うるさいな」
「それにこのナイフ。
俺のみ立てじゃあ、ざっくりと人を斬った感じだな。
お前さんのその細い腕で、よくこんなに深く切り込めたもんだな。
斬ったのはメタボの人間か?」
少年は切羽詰まったように、唇を噛みしめる。