多々なる世界の〇〇屋【企画】


 確かに男の言う通りであったが、少年はうなずかず、身をかがめた。

「……あんた、何者だよ」

 少年は問うた。

「む?」

「悪人の道を塞ぐとか、善人の道を開くとか、あんたの仕事ってなんだよ。

……《あの人たち》と同じような、只者じゃない職業か?」

「ふふん、よくぞ聞いてくれました」

 命の危機に身を投じた男が、平然と鼻で笑った。

それが少年の気に障る。

「俺は《進路屋》、人の道の有無を、そいつの所業で確定する専門職よ。

もちろん、誤認は許されねえ。

真の善悪を見極め、その進路を確定する。

―――だから、てめえが本物の殺人犯かどうかも、ここで見極めるんだい」

 少年の瞳が揺らいだ。

ナイフの切っ先に、心が震撼する。
 
 刺さなくては、逃げられない。

逃げなくては、自分は立場を失うのだ。

できるだけ遠くに逃げ、犯人らしく逮捕され、殺人犯としての罪を背負わなくてはならぬ。

 そんな心境を、おそらくこの男は察している。

 




 ―――少年はやがて、怖気づいたのか涙目になってナイフを持たなかった。




 

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