多々なる世界の〇〇屋【企画】


 * * *

 
 柄の悪い男どもが、くだんのキャバクラの前にたむろしていた。

「あのがき、上手くやってますかねえ」

 下層部らしきチンピラの男が、顎髭の男に言った。

「早く捕まったって、物的証拠を持ってんだから大丈夫だろ。

俺たちの証拠とは思わねえさ。

あの殺された奴と俺たちが、薬の繋がりのいざこざを起こしたとは、頭にも浮かばねえだろう」

 すると―――。

「おやおやお兄さん、髭やろうどもとたむろって、いったい何の秘密話で?」

 そう笑んで、茶化してくるのはサングラスにマスクをした不審者の代表的な格好の男であった。

 なんだよてめえは、と歩み出た若造を制し、リーダー格のごつい男が不審者男の眼前に立った。

「おい、何が言いてえ」

 不審者の口調がわざとらしいのを察したらしい。

ごつい男が不審者の胸ぐらをつかんだ。

「いいや、別に悪いことをいたしやしませんよ。

ちょいと、薬物の間の争い事なんざ……」

 刹那。

 やくざ者の兇刃が不審者めがけて突き出された。

 しかし、刺し貫いたのは不審者の残像だった。

どこへ行ったのか。

「むう!?」

 やくざ者が目をひん剥いた。

 男は下駄をからんと鳴らすや、見上げるほどまで高く跳び、宙返りをする。

化け物か―――。

 今一度つきだされたナイフの切っ先を、



 かたん、と踏み、次の瞬間には不審者は地に降り立っていた。

そして、そのまま長身のやくざ者を蹴り上げた。

「げ」

 やくざ者が白目をむく。

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