多々なる世界の〇〇屋【企画】

不覚にも圧倒されてしまったのか、桜羽は無意識に携帯電話を渡していた。

夕方に差し掛かる時間、黒田はある場所に電話をかける。


「もしもし?あの、文香さんに連絡。近くに不審者が出たので、今日中はもう外に出ないように、と言っておいてください。それと、もう1つ」


どうやら『黒田』に掛けているらしい。
親が出たのか、黒田は『黒田 文香』の名前を出し、嘘らしいことを口にする。


「木戸 鞠乃は生きている、と。文香さんに伝えてください」


一方的に電話を切り、携帯電話を桜羽に返した。


「不審者なんて、出てたか?」

「あれか?全部嘘だよ。そうでもしなきゃ、文香はいつも通り散歩に出かけて・・・」


黒田は、唇を噛み締めて苦々しそうな顔をする。


「車に撥ねられて、今日死ぬ」


命日、そういうことか。


桜羽は自然と腕を組んでいた。










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