童顔教師が居候。





「やっぱ…我慢してきて良かった」







…?突然の意味深な言動に、私は首をかしげた。
我慢?何を?



そうだ、この人はいろいろ謎が多すぎる。
私にだけ強気で、他人には「素」を見せないし…。
雀とか呼ぶし…家は知ってるし…
それになんのために顔を隠してるのか。





「…まだわかんねぇの?」






切なげで悲しい声色の問いかけに、驚き顔をあげる。
そこには…辛そうに顔をしかめ、今にも泣きだしそうな表情の鰯がいた。
潤んだ瞳の奥に、不安が隠れ見えた気がした。





…まだわかんないって、どういう意味?

…なんでそんな悲しい顔するの?

…なにがそんなに不安なの?





「…失礼しますっ」






何が何だか分からなくなった私は鰯の腕を潜り抜け、逃げるように準備室を後にした。





「…逃げんなよ…」






一人残してしまった先生が、辛そうに俯いていることも知らずに。













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