ヤンデレな弟はお好きですか?
溝出の自論を無視して、冬月がふすまを開ける。
さあーっ、と綺麗に開け放たれた部屋は無人。兄が持つ刀がないことから出かけたのは確かだった。
これで三日目。
「今日も兄さんに会えへんなんて……」
爪でも噛みたい気分になった。
「諦めろよー、冬月ぃ。ヒィハハ、てめえのだーい好きな兄さんは、今頃」
うしゃしゃと意味ありげに笑う溝出の頭を、冬月は掌握した。
りんごを握りつぶせる握力はないが、地味に痛い。
「た、タンマタンマっ。みしみし言ってる!」
「兄さんはどこにぃ行ったん?」
「いや……冬月には教えるなって言われてるし。ちょ、分かれ!ここで言ったら、俺が秋月にいびられる!」