ヤンデレな弟はお好きですか?
いたいと喚く溝出の言葉なんて冬月の耳に入らなかった。
「兄さんが負けた?巫女、おなごなんかに?」
「マジだぞ!俺も一緒だったからなぁっ。負けた後もたまにその巫女に会いに行ってんだ、秋月の奴ぅ。巫女と仲良くやってる、ずえっ」
溝出自身の肋骨が、冬月の手によって飛んでいった。運悪く、庭先を歩いていた飼い犬がキャッチし、土に埋めようと持って行く。
「待ておらぁぁ!」
「ありえへん、兄さんがおなごなんかと……。そや、間違いどす。きっと間違いや」
犬を追いかけようとする溝出の頭だけを掴み、生気が抜けつつある体でふらふらと歩く。
「ちょっ、冬月っ。どこに行くんだ、おい!」
「兄さんが……、兄さんが……」
「おいおいおい、あぶねえよ、こいつ!おまわりさーん、麻薬常習犯がぁぁぁっ」
うそぶきが虚しく響く秋空の下。溝出の運命は最悪と共にあった。