人生ゲーム【リメイク】
「23時30分になりました」

男の目元と口元の笑みが光の癪にさわった。

「全員契約書にサインしていただきました。ではこれより別室へ移ります。こちらへどうぞ」

男の後ろを参加者がぞろぞろついていく。

階段を上がり2階へ移動した。

「半分ぐらいやな」

2人が最後尾で階段を上がっていたとき猛がぽつりと呟いた。

「何が?」

何のことを言っているのかわからず光が首を傾げた。

「初参加者」

どうしてそんなことが分かるのだろうか。

光の不思議そうな表情を見て猛は続けて口を開いた。

「俺みたいに1回参加したことあるやつは初々しさがないやろ」

猛は笑った。

「ほら、光から見て3人前のやつ足震えてるで」

狭い階段なので1列でしか上れない。

光は前を覗き込んで3人前を見た。

細身の女性だがその足は確かに震えている。

「気をつけや。初参加者はカモにされやすい。堂々としてつけ入る隙をなくせ」

そうだ。

もう勝負は始まっている。

ここで弱気になっていては強い者に搾取されて負けるのがオチだ。

現にゲーム開始前にこれだけ人を観察している猛ですら前回のゲームでは5千万負けているのだ。

それなのにこんな自分が勝てるのかどうか不安が渦巻く。

頭の中で借金まみれになる自分が思い浮かんだ。

そんな光の様子に気づいたのか猛は肩
を叩いた。

「気持ちで負けたらあかん。俺がついといたる」

光は口の端を上げて頷いた。

絶対に勝つ。

そう心に誓った。


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