清水の舞台
平成十三年 春


「昨日、綺麗な方と清水寺で遊んでたわね」

真理子は席につくなり、そう言った。

「見られてましたか。はい。あれが今お付き合いしている人です」

「凄く綺麗な人ね」

「松木さんには全然かないませんけど、僕にはもったいない人です」

「どこで、そんなうまい言い方覚えてん」

真理子は突っ込んだ。

「二人を見てね、お互い愛し合ってるなっていうのが、凄く伝わってきたわ」

「ええ、愛し合ってますから」

倉田は照れることなくそう言った。

「でも、幸せそうじゃなかったのよ。愛し合ってるけど、幸せじゃない。なにか今にも清水の舞台から、二人で飛び降りそうな感じがしたわ」

真理子は思ったままを述べた。


「さすが、松木さんですね」

と倉田は言った。


< 19 / 31 >

この作品をシェア

pagetop