清水の舞台
「今、上の部屋に居てるんで、呼んできてもいいですか」

と倉田は言った。

突然のことに驚いたが、ええ、会ってみたいわ、と真理子はこたえた。

会ってみると、優しい雰囲気をもった美しい女であった。

「いつも家賃のことでは、この人がご迷惑をおかけしていまして」

佐藤由美は申し訳なさそうに挨拶した。

そのことにはふれずに、

「こんにちは。昨日、お二人が仲良く歩いてらっしゃるのをお見かけしたんですよ」

と真理子は言った。

「そうですか、お恥ずかしい」

由美は小さな声でそう言った。


「何も恥ずかしいことじゃありませんわ。お似合いの素敵なカップルでしたよ」

真理子は素直に思ったままを言った。


すると、倉田が、実は、と話しだした。

「僕たちは不倫の関係にあるんです」

やはり、と真理子は思った。

それが、彼らが愛し合ってるが、一緒にいても幸せそうにない理由なのだ。

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