清水の舞台
せつないな、と青山刑事はもう一度言った。

そして、また松木真理子から調書をとりだした。

「あなたが最後に、倉田良行に会ったのはいつですか」

「平成十三年の十二月です。私が『ルー』に飲みに行ったときです。その時、倉田さんが二十万円をください、と言ってきました」

「ください?貸してください、ではなくてですか?」

「ええ、ください、です」

「それで、どうしたんですか?」

「あげました。たまたま持ち合わせていましたので」

と真理子は答えた。

「二十万円も、ですか?こんなこと言っては、失礼かもしれませんが、あなたは倉田さんのことが好きだったのでは」

青山はすまなさそうにきいた。

「いえ」

真理子はそう答えた。

「いや、これは失礼。その日以降、倉田に会ってないのですか」

「はい。その日から三日後に『ルー』に行ったら、倉田さんはいませんでした。部屋にこの手紙がおいてありました」

そう言うと、真理子は一通の手紙を青山に差し出した。

「拝見します」

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