清水の舞台
青山は手紙を読むと、

「ここに書かれている“平成十三年十二月十日”というのは、佐藤由美が家出をしたのと同じ日です。まず倉田と一緒にどこかに行ったには違いありませんな」

と言った。

「ええ、そうでしょうね」

真理子は同意した。

「倉田は駆落ちするための当座の金が必要だった。そこであなたに金を無心した、ということか」

はい、とだけ返事した。


「それ以後、倉田から連絡は?」


「一切ありません」


「倉田良行と佐藤由美がいなくなった平成十三年十二月から佐藤由美が自殺した平成十七年までの約三年の間に、二人が何をしていたのか、どこにいたのか、知る者はなしか」

と言うと、青山はノートをとじた。


< 27 / 31 >

この作品をシェア

pagetop