清水の舞台
平成十二年○月△日。

倉田良行のショットバー『ルー』に松木真理子が来店した。

オープンして一月経った頃である。

真理子の来店の目的は三つあった。

一つ目は、店の内装がどのように変わったか見ること。

二つ目は、店の流行り具合の調査をすること。

そして、三つ目が、倉田と話すことである。

店内の壁は塗りなおされ、床ははりなおされていた。

照明は安っぽかったが、それがかえってアンティークな感じになり、オシャレなバーとなっていた。

これ、全部倉田さん一人でやったんですか。

真理子は注文したカルアミルクを待つ間に聞いた。

「ええ、金がなかったもので全部自分でやりました。このスナックの形なら僕の思っているバーに改装できると思ったんで」

倉田は自慢げに答えた。

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