桜の木の下で……
出会う二人
今日は霜月学園の入学式。
今はその帰り道。
学園の階段を降りた所に2車線で引かれた道路の脇に、等間隔で並んだ桜並木。
紺色のブレザーに赤いリボンをつけ、膝下まで伸ばしたスカートの前にカバンを両手で握る。
まだ少し寒さを感じる風に肩下まである髪がなびく。
桜の花びらが宙を舞う。
並木道を歩いていると、並木の隣に一際大きな桜が立っていた。
吸い込まれるようにその桜に足を運ぶ。
見上げて、はっとする。
枝木に男の子が、足を伸ばして本をよんでいる。
下から見上げるその顔は、彼女を強くドキリとさせた。
椎名 叶。
初恋の桜日和。