空人1〜奇跡〜
「あはは、もう。ホントに、秋人って駄目」
「はは……いきなり気づけ、って方が無理だから」
「はあ? 私達、何年の付き合いだと思ってんのよ!? それ位秋人なら察せるでしょ?」
「いや、普通そんな事考えねぇって。あ、一緒に帰るの、勿論オーケー」
「何言ってるの、当たり前でしょ!! 今断ったら、空気読めなさすぎ」
「ははっ、そうだな。……はあ」
全く、さっきまでの可憐さはどこに行ったんだか。
少し大袈裟にため息をつく。
「何そのため息、やっぱり文句でもある?」
「いや、別に。柊でも、泣くんだなって」
「はいっ!? だから、その言い方ひどいっ! 私、女子なんだからねっ!」
「はは、そんなの分かってるって。でも……まあ、滅多にお目に掛かれないし」
「……。だから、忘れてって」
そう言う柊の今の表情は、先程まで見せていたのと同じ。
やっといつもの調子に戻った今、柊を無性にからかいたくなる。
「無理。……俺、絶対忘れない」
「ひどい! そんな事言ってるなら、秋人の秘密、ばらしちゃうからね!」
「……何だよ、秘密って。お好きにどうぞ。絶対、忘れねえから」
頬を膨らませてムキになってくる柊が面白い。
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