空人1〜奇跡〜
「それじゃあ、さっさと帰りますよ。……またな」
皮肉を込めて言い放ち、椅子から立ち上がる。
机の脇に掛かっているスクールバックを手に取り、そのまま教室の扉へと向かう。
この時、柊の表情を見ていなかったから――…。
「そんな言い方ないでしょ!」
ビクッ。
先程以上に強い電流が流れる。
今まで聞いた事の無いような、柊の大きな声。
多分それは俺に向けられているんだろう。
でも……頭で分かっているのに体は硬直し、後ろを振り返れない。
そして。どうして柊は叫んだ? 特に何もやらかした覚え、無いんだけど――…。
事態がこじれつつあるのを察し、扉に掛けている手に力を込める。
これ以上状況を面倒にしないために。
しかし、扉は開けられなかった。
やろうと思えば、普通に出来たのかもしれない。
でも、そうさせてくれなかった。
沈黙の中、突如始まったから。
背後から、普段聞き慣れない音が聞こえてきて。
違和感を覚えると同時に。金縛りが解け、後ろを振り返る。
そして俺は絶句した。
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