空人1〜奇跡〜
明らかに様子がおかしい。
顔を俯け視線を逸らしている柊。
そう、音の正体。
それは、柊の嗚咽。
まさか。ある予感が俺の頭の中をよぎった。
ほぼ同時に、それは正しいと示される――…。
ポタッ。
柊の瞳から、一粒の雫がこぼれ落ちる。
柊の、涙。
……。
おい……泣くなよ、柊?
自分でも動揺を隠し切れないのが良く分かる。
俺のせいで泣いているような気がしたから。
柊は俯いたまま、声を押し殺して泣いている。
柊の泣き姿なんて、今まで多くは見ていない。
……。慣れねぇ、こういうのは。
下唇を噛みながら、俺は柊をただ呆然と見る事しか出来なかった。
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