空人1〜奇跡〜
 


明らかに様子がおかしい。


顔を俯け視線を逸らしている柊。



そう、音の正体。


それは、柊の嗚咽。


まさか。ある予感が俺の頭の中をよぎった。


ほぼ同時に、それは正しいと示される――…。




ポタッ。


柊の瞳から、一粒の雫がこぼれ落ちる。


柊の、涙。



……。


おい……泣くなよ、柊?


自分でも動揺を隠し切れないのが良く分かる。


俺のせいで泣いているような気がしたから。



柊は俯いたまま、声を押し殺して泣いている。


柊の泣き姿なんて、今まで多くは見ていない。


……。慣れねぇ、こういうのは。


下唇を噛みながら、俺は柊をただ呆然と見る事しか出来なかった。


< 5 / 13 >

この作品をシェア

pagetop