空人1〜奇跡〜
「何だ、そんな事かよ。先に言ってくれたらいいのに。全然問題ない、から」
……クソッ。
思ってるように表現出来ない。
素直に謝るべき、頭では分かっているはずなのに。
俺は、これで良いのか? こうやって逃げて良いのか――…?
そんなの、分かんねえっ!!
おい、柊――…。
何でこんなに、俺は顔を火照らせなくちゃならないんだよ。
素直に謝れないから恥ずかしいのか? 柊と話すのが久し振りだからか?
それとも――…。
自分の感情が抑えられなくなる中、柊は再び顔を上げる。
柊の顔は涙で濡れながらも、しゃんとしていて。
柊、どうしたんだよ。
お陰で調子、かなり狂わされる。
“ドクン”
今までに無い位大きな心臓の鼓動が、はっきりと聞こえる。
俺自身がどうなってしまっているのか、分からない。
そんな時、柊が動き出して。
“バシッ”
俺は、肩を叩かれる。
あまりにも唐突すぎて、唖然とする事しか出来ない。
柊が、近くにいる。
緊張感の元理由が読めない柊の行動に困惑しながら、再び体が硬直していくのを感じた。
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